中国武漢から始まった新型コロナウィルスの感染が世界中に蔓延し、猛威を奮っていますが、その影響はスポーツの業界にも広がってしまっています。
日本では、3月1日の東京マラソン一般参加の中止、3月8日開催予定だった静岡マラソンの中止に端を発し、Jリーグをはじめとする多くの競技で試合が延期や中止、無観客での開催になるなど各団体が対応に追われています。イタリアでも感染者数の拡大を受けて、サッカーセリエAの3試合が中止になるなど、その影響はアジアだけにはとどまらない事態となってきました。今後も感染拡大が防げなければ、多くのイベントの開催中止が広がることが予想されます。
収束が見えない新型コロナウィルスが、今後「パンデミック」と呼ばれる世界的大流行に発展してしまったら、様々なスポーツの現場で更なる影響が予想されます。最も危惧されるのが、東京オリンピック・パラリンピックの開催です。世界中から人が集まり、当然スタジアムやお店等で多くの人々が濃厚接触することが予想されます。この後北半球の国々では、冬から春へと季節が変わり、湿度が高くなることが安心材料ではありますが、オリンピック開催まで5か月を切った中で、無事に開催することができるのか非常に心配な状況です。
今回はスポーツビジネスやスポーツマネジメントが専門の立場として、スポーツイベントが行われるにあたっての「キャンセル保険」についてお話をしたいと思います。昨年、ラグビーワールドカップ日本大会が開催され、日本中が沸いたことは記憶に新しいと思いますが、その中で、台風19号の影響で3試合が中止されたことを記憶している方は少ないのではないでしょうか。ラグビーワールドカップにおいての日本の収入源は入場料収入であり、この3試合分の損失額は約20億円に上りましたが、この時にも「キャンセル保険」によってこの損失の大半をカバーし、大幅な収入減という大打撃には至らなかった経緯がありました。また、過去には2001年のアメリカ同時多発テロ事件の際に、全米で最も人気の高いNFLスーパーボウル中止がありましたが、この時の損失も「キャンセル保険」がカバーしたと言われています。キャンセル保険では損失額の80%から90%をカバーすると言われています。
当然のことながら、東京オリンピック・パラリンピック2020においても、キャンセル保険には加入しているでしょうが、範囲をどの程度までにしているのかは定かではありません。1兆5000億円近くを投じて準備を進めてきた東京オリンピック・パラリンピックですが、中止となった際の社会的な影響は想像がつきません。
これだけ医学が発展し、かつ清潔な国である日本においてさえも感染者が拡大している中で、世界の国々での感染拡大は脅威です。オリンピックが戦争以外で中止となったことは過去にない中で開催に向けた今後の対応が注目されます。
著者プロフィール
佐々木 達也(東京都出身)
・城西大学 経営学部 准教授 スポーツマーケティング・マネジメント分野領域を専門とする。
・早稲田大学人間科学部スポーツ科学科卒業。早稲田大学スポーツ科学研究科修了。
・大手総合広告代理店にてスポーツに関する業務に携わり、Jリーグクラブ勤務後、金沢星稜大学人間科学部スポーツ学科講師を経て現職。現在もJ2ツエーゲン金沢シニアアドバイザーを務める。